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一般演題24 女性手術患者の羞恥心への配慮に対するアンケート調査について

医療法人倚山会田岡病院 小山裕江、鏡 美帆、加村輝幸、山中明美

研究目的

手術を受ける患者の不安を軽減することは手術看護の大切な要素であり、「手術を受ける 患者の擁護者・代弁者としての倫理的役割」1)がある看護師は常に意識しなければなら ない。当院の手術患者は術前術後衣で手術室に入室しているが、下着として全員(おもつ 利用者は除く)に使い捨てパンツ、女性患者にはさらに使い捨てブラを着用してもらって いる。使い捨てブラはチューブトップタイプで背面の結び目をなくして幅広の紐状に変更 したものである(写真)。この使い捨てブラを手術室で採用している病院は全国でも珍し いと思われる。 使い捨てブラの着用が女性手術患者の不安軽減に役立っているのか不明であったため、平 成28年に女性手術患者を対象にアンケート調査を行ったところ、約7割の患者から使い捨 てブラに対して肯定的な回答が得られ予想以上に使い捨てブラに対する感謝の意見がきか れた。残りの3割について分析したところ、サイズが合わなかったために使い捨てブラは 「なくてもよい、どちらでもよい」という回答になったことがわかった。

そこで使い捨て ブラの取り扱い業者(イムスインターナショナル、高松市)に、より多くの女性患者の体 に合う使い捨てブラがないか相談したところ、身生地といわれるバストを覆う部分の生地 面積を広くし伸縮性がよくなりほとんどの体型の女性患者に合う物を作成してもらうこと ができた。ふくよかな女性患者用には紐の部分を長くし、サイズを2サイズ(Regular size, Large size)とした。そして改めてアンケート調査を行ったので報告する。

対象

平成29年7-8月の2ヶ月間に予定手術を受けたASA1-2の女性患者44名。

認知症などでアン ケートに回答することが難しい患者は除外した。

方法 1

どちらのサイズを渡すかは病棟看護師の判断にまかせ、術前術後衣と一緒に患者に使い捨 てブラを渡した。使い捨てブラが消毒範囲にかかる場合は、麻酔導入後にブラをずらし手 術終了後に元の位置にもどした。 アンケート用紙(図1)は手術室看護師が入院時に患者本人に渡し、手術後に回収した。 倫理的配慮は書面で提示した。

結果

患者背景

年齢:15-89歳

身長:140-160cm

体重:42-68kg

手術時間

16分-4時間15分(平均1時間30分)

担当科

外科、整形外科、脊椎内視鏡外科、乳腺外科、甲状腺外科、形成外科

サイズ

Regular size 42名 Large size 2名

アンケート内容

問1.:使い捨てブラの着用についてどう思いましたか?

全年代では約9割から「とてもよい」「よい」との肯定的な回答が得られた(図2)。40 代までの若い世代では全患者から肯定的な回答が得られた(図3)。理由は全年代で「安 心感がある」が多かった。「なくてもよい」「いらない」理由は「高齢なので恥ずかしさ を感じない(60代)」や「手術を受ける時点で自分をさらしている(80代)」などで、 前回アンケート結果の「サイズが合わない」というブラそのものに言及されたものはなかっ た。

問2.つけ心地はいかがでしたか?

7割以上が「問題なし」、約3割が「ゆるかった」と答えた(図4)。「きつかった」と感 じた患者はいなかった。「ゆるかった」と答えた患者を含め調査期間中の全患者で手術室 入室から退室までの間に使い捨てブラがずれるなどしてバストが露出されることはなかっ た。逆に「ゆったりしていてよかった」という意見が多かった。

問3.着用時または着用後に次のようなことがありましたか?

「問題なし」が95%をしめた。「赤くなった」「かゆくなった」が1例ずつみられたが、 いずれも短時間で消失しており、使い捨てブラによる問題となる皮膚トラブルは確認され なかった。

問4.今後手術を受ける女性に使い捨てブラをすすめますか?

「是非すすめる」26%「すすめる」56%「すすめない」0%「どちらでもない」18%と約8 割の患者が他に手術を受ける女性にも使い捨てブラは薦めたいと考えていることがわかっ た。「どちらでもない」理由として「手術を受ける人にすすめる機会がない」という回答 があり、質問方法に問題があったかもしれない。

考察

当院では女性手術患者の羞恥心への配慮として、手術室入室時に使い捨てブラを着用して もらっている。ただ以前に採用していた使い捨てブラは手術室でずれてバストが露出して いることが多かった。また前回のアンケートでサイズについての不満がきかれたので、使 い捨てブラのサイズについて業者と検討を重ね、多くの患者の体型に合うと思われるもの とした。その結果、使い捨てブラに対する患者の満足度は上がり、手術室内でもずれるこ とによりバストが露出することはほとんどなくなった。 今回のアンケートで患者から寄せられた意見には次のようなものがあった。「つけている だけで安心感がある(80代)」「何歳になっても女性は女性、嬉しかった(80代)」「手 術に対して前向きになれた(60代)」「女性に対して配慮があると感じた(40代)」こ れらから、患者の羞恥心に配慮することが手術に対する不安軽減に役立っていると考えら れた。 現在当院では看護師による術前術後訪問は行っていない。今回アンケート用紙を受け取り に行くことが手術患者の生の声を聞くいい機会となったが、ほとんどの患者から感謝の言 葉をいただいたため、手術室スタッフのモチベーションが上がることにもつながった。 今後の課題として、今回の手術平均時間は1時間30分と比較的短時間であったため、手術 が長時間になった場合、皮膚トラブルが発生しないかどうかはさらに調査する必要がある。

結論

当院では女性手術患者に使い捨てブラを着用してもらうことで羞恥心への配慮をおこなっ ている。今回の研究で使い捨てブラが患者の手術に対する不安軽減に役立っていることが わかった。

引用文献

1)日本手術医学会:手術医療の実践ガイドライン(改訂版)

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